相鉄・JR直通線 初乗車記録

 北海道の鉄道記録から一旦離れて、横浜自宅近くに開業した新線乗車記録を綴ってみました。


 2019年の鉄道関係の一番の話題は台風19号による千曲川氾濫の影響で北陸新幹線車両10編成(120両)が車両基地で浸水してその車両すべてが廃車になったことだろう。これらの車両は、その走行する地域で用いる交流と直流の電流を交互に切り替え可能な、そして他の路線の新幹線では代替できない高価な車両だった。それが浅草のどじょう鍋のように整列して泥水に浸かっているサマは何とも衝撃な映像だった。JRは線路の浸水と車両不足のために北陸新幹線は金沢までの運行を直ちに取りやめたが、幸いなことに驚異的な対応の結果、臨時ダイヤで約10日後にほぼそれまでのダイヤと遜色ない格好で復旧した。しかしながらなぜ、ああなるまで列車を一編成も動かさなかったのかと、個人的には、そのお粗末と感じる対応に久しぶりに頭に血がのぼったニュースであった。
 その次の話題は、横浜のローカルな私鉄の相模鉄道(以下、相鉄)が約10年越しの難工事を行いJR東海道線の一部ともいえる貨物線とつなげ、横浜を経由せずに東京都心部へ直通列車を走らせ始めたことだろう。事前の情報では武蔵小杉から先は湘南新宿ラインのルートを通るということから、湘南新宿ラインの電車が海老名に来るのかと錯覚していたが、なんと相鉄線の電車の中にJR埼京線の電車が乗り入れることとなった。
 相鉄は、横浜周辺のヒトのみが利用するローカルな私鉄であり、その他の地域の人にとって見たら全く無関係なことであろう。ところが個人的には自分が2003年以来居住する保土ヶ谷区を通り、妻もその沿線に職場があるということで注目していた。
 そしてこの新線の唯一の新駅羽沢横浜国大駅が自宅の徒歩圏内に出来たということはなんという偶然・ご縁かと感じた。
 自分には自費出版で乗入れ列車の乗車記録をまとめた本が2冊ある。
 乗入れ列車だけが趣味なのではなく、乗り鉄として全国のJRと私鉄を一度完乗しているので、何を書いてもよかったのだが、なにか鉄道本としての新しい切り口として、読む人にとって真新しい観点でと著作を制作し、重箱の隅のような話を2冊に渡って書いた。
 2冊で止めたのは、その時点でそれ以上の乗入れ列車がなくなったからでもあった。
その後、乗入れ列車として、東北本線仙石線の間に渡り線を増設し、仙台と石巻間を走る仙石東北ラインが走り(2017年)、JR東日本の今後のビジョンの中に貨物線を利用した羽田空港付近のアクセスの向上などで地道に乗入れ列車が広がる可能性を見せていた。
 そして相鉄・JR直通線の乗入れ列車が2019(令和元)年11月30日に走り出した。
 当然乗らいでかということで、開業1週間前にいまだ工事中の羽沢横浜国大駅を下見し、家からのアクセスがあまりよくわからない不安を取り払い、万全の態勢で開業当日の朝駅に向かった。
 上り電車の西谷始発の時刻に行ってもいいと思ったが、この時期は夜明けが遅く6時頃では暗くて付近の様子が分からず、ちょっと右側に見える貨物駅(横浜羽沢駅)の景色も見えなければ、個人的には新開業区間を乗車したことにならないので、夜が明けた7時過ぎに家を出た。
 一度坂を下ってバス通りに出て今度は畑の中の坂道を登る。丘の上の尾根道みたいなところに到達して少し南に進み今度は反対側に降りていくと羽沢のJR貨物駅が見えてくる。
 相鉄の駅舎はその貨物駅を横断するクリーム色の網かごのような跨線橋を渡った先にある。
 渡って見下ろすと駅前に大勢のヒトがとぐろを巻いている。想像以上の混雑が始まっていた。 

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 なんと次の西谷行きの電車は下り電車の一番列車で、7時37分発である。駅の構造をゆっくり見る余裕がなかったので、改札を抜けて1番線に降りる幅の広い階段を駆け下りる。結構な深さだ。両脇が煉瓦模様(の壁紙?)で、大学の駅の雰囲気を作ろうとしているのかのようだ。降りたところが、ホームドアの付いた相対式ホームだった。
電車は発車定刻の1分ほど前にやってきた。相鉄がこの線のために作った深い青色の12000系電車10両編成だ。ホームは地上の混雑から見るとかなり空いていて電車より記念切符に興味のあるヒトがいかに多いかということであろう。
 定刻発。車内の座席はほぼ埋まっているが、立つヒトは少なく車窓を見るには問題ない。電車はさらに地下深く走るが徐々に右カーブしながら勾配を登る約2分後に地上に出てすぐに西谷7時40分到着。この2.7キロが新線である。あっけないと言えばあっけない初乗りであった。西谷は島式2本のホームで1番線に到着。
 沖縄のモノレールが2019年10月に4.1キロ延伸し、それを乗っていないので、日本全国完全乗車が途絶えているが、とりあえずこれで本州完全乗車はキープされたことになる。
 改札を出てすぐさま、逆方向の7時48分発の川越行に乗るため、再入場し4番線に降りる。JR東日本E233系埼京線電車がすでに大勢の客を乗せて待機していた。4号車のE232-7037 に乗車。しばらくして向かい側ホームに横浜行の快速が到着して、まあまあの数の乗客がこちらに乗車。ただし半分以上は開通した線に乗るための乗客のようだ。向こうが先に発車して、こちらは後に発車。すぐさま地下トンネルに入り込み、あっという間に羽沢横浜国大駅到着。1分ほど停車。乗務員が相鉄からJR東日本に交代しているのだろう。乗ってくるヒトは少ない。
 ここから先JRの貨物線までの短い区間が新しい線ではあるので、右側の車窓に注目する。
 発車直後、東横線につながる新線の複線のトンネルの出口が見える。すでに完成しているようだ。徐々に勾配を上げて地平線のレベルになると横浜羽沢貨物駅の構内が良く見えてくる。手前でテントが張られちょうど何か落成式のような儀式を行っている集団が見える。今回の開業と同時になにかこしらえたのだろうか。ゴトゴトと貨物線の線路との合流が終わり、雑木林の山をちらりと見て列車は長いトンネルに突入する。

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 ここから先は2001年に初めて乗車してその後数回乗車している。湘南ライナーという東海道線の通勤快速列車が平日毎日走っているので、これまでも毎日乗っているというヒトもいるだろう。羽沢横浜国大駅から次の武蔵小杉駅の間は16.6キロもあり、首都圏での駅間隔では一番長くなった。東京駅から京浜東北線で南にいけば蒲田の先の多摩川大橋あたりまでの長い距離をノンストップで走る。そのうち大部分が地下トンネルで東海道本線の鶴見手前で地上に顔を出す。トンネルの中では、インターネットが使えるようになっている。鶴見駅を左手に見て、徐々に高度を上げていき鶴見川を渡ったあと、左カーブして高架橋で東海道線京浜東北線をオーバークロスし、徐々に地平に降りてゆく。右側から南武線の尻手から続く貨物線が合流して、新川崎駅の構内に近づく。
新川崎駅は一番西のはずれの貨物線を疾走する。様々な機関車が止まっていて見るのが楽しい。
 やがて少しスピードが落ちて、右手に武蔵野線の梶ヶ谷貨物駅に延びる単線のトンネルが見え、横須賀線との合流地点に差し掛かる。さりげなく、ゴトゴトとポイントを通過して合流する。すぐに武蔵小杉駅4番線に定刻8時8分到着。ここで乗り換えれば、同じホームで東京駅方面にも千葉・成田空港にも行ける。便利なことこの上ない。
 マイナーだった貨物線が有効利用されることで、相鉄線に太い動脈が移植されたことを実感した。

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(この項おわり)