富山地方鉄道市内軌道線と旧富山ライトレールの直通

 2020年3月は新型コロナウイルス感染が世界にまん延し、その感染力の強さと有効な治療法のないために世界中が震撼し始めた。

 その感染拡大が騒がれているさなかの3月21日にJR富山駅の下の新しい渡り線に電車が走るようになった。

 富山駅北陸新幹線が2015年に開業する前から大規模な駅の高架化の建て替え工事が進んでいた。その中で富山駅を始発とし北東の岩瀬浜まで8キロ弱と短く伸びる富山港線を高架にしてまで存続するかの検討が行われ、結局採算の面でJRから第三セクターに切り離されて富山ライトレールという路面電車で2006年3月から存続することとなった。路面電車化したのは構想として、富山駅の南側に7.5キロの市内軌道線を有する私鉄の富山地方鉄道との相互乗り入れがあったためらしい。それが2020年に実現することになった。JR富山港線はもともと戦前に富山地方鉄道の前身の会社が所有していたのを当時の国鉄が買収しているので、長い年月を経てまた戻ってきたということになる。南北の連絡線建設という構想から実現まで15年以上という気の長いプロジェクトが完了し直通列車が走るようになった。ともかく粘り強くやっていれば夢が実現するというお手本のような路線である。

 僕の個人的な鉄道趣味としては、旧富山ライトレールが高架になった富山駅の下に延びて、南からは富山地方鉄道路面電車の線路が伸びて、合体するという分かりやすい渡り線に今回乗っておこうということである。

 ということで、開通2日後の3月23日に富山駅に降り立ち、その渡り線に乗ろうと思った。

 個人的には、日本のJR及び私鉄の全線を一度乗りつぶしたが、このような別の路線同士が直通運転をする際に渡り線という直通を可能にするような短い(時には少し長い)線路を敷設することがあり、そこも乗らないと全線の乗りつぶしにならないという“こだわり”が趣味になっている。

 図示すると以下のようになる。

f:id:Noriire23:20200402143216j:plain

 実際に20メートルに満たない長さである。ひょっとすると、その重要性は分かるヒトにしか分からないだろう。これがようやく完成して次々と列車がやってくる。本当に祝福したい気分だ。

 富山地方鉄道の軌道線用車両(路面電車)には、何種類かあるようだが、旧型の車両はいずれも一両編成で、富山駅で従来の南方の路線専用で折り返しているようである。

 富山駅南に行く路面電車は昨年(2019年)11月に富山に来た時現在の富山駅から発車しており、自分は南方向から駅まで乗車していた。調べてみると北陸新幹線が金沢まで開業した2015年3月14日に同時にこの停留所も開業していたので、南側の渡り線は5年前にすでにでき来ていたということになる。もともと駅前の道路面して「富山駅前」という停留所があったのをむりやり駅に引っ張り込んだ格好であるが、新幹線及びそれまでの在来線だった「あいの風とやま鉄道」の富山駅の改札口を抜けて直進するとこの停留所に行け、乗客の利便は格段によくなった。高架の駅下なので、特に冬場の雨と雪を避けて屋内で電車を待つことができるのは大いにありがたいことだろう。

 ということで、本日は北に向かう旧富山ライトレールへの渡り線に乗車することが目的になった。

 昨年11月の時点ではこの個所が激しく工事中で市内電車のホームの構成がよくわからなかったが、本日冷静に眺めてみると二本の線の真ん中に島のようになっていて2本、両脇に2本とホームがあり、さらにそれが真ん中で歩行者通路によって前後に分断されて、合計8つのホームとなって各方面に行くときの乗車口(あるいは降車口)として区別されているようであった。富山地方鉄道の南への軌道線はそれほど長くはないものの、山手線のような環状部分があったり、行き止まりがあったり、行先もバラエティがあるので8つのホームが必要なのだろう。

 今度の岩瀬浜行は駅改札口から一番手前の5番線から発車する。すでに10人以上が並んでいる。晴れてはいるものの風が冷たい。スマホの乗り換え案内時刻表では11:56富山駅発だが少し遅れているようだ。

 すぐに2両の銀色の低床式の路面電車セントラム)が到着。停留所南側の1番線に止まっていた電車が出発するのを待っていたようだ。

f:id:Noriire23:20200402143531j:plain

 電車が来ると、横断する通路に立つポールが赤く光り、通行人を通せんぼするガードマンが二人手を広げている。踏切にするわけにもいかずこの辺はマニュアルで安全を確保する作戦のようだ。

 12:05発車。車内は立つ人が多く盛況である。停留所を出てすぐに右に30度ほど折れて旧富山ライトレールの駅があったところを通過する。この辺は4つの線に分岐する箇所なのでポイントが複雑に交差している。やがてそれが1本に収束していく。それを眺めながら、未乗車区間完乗を密かに喜ぶ。

f:id:Noriire23:20200402143835j:plain

(この項おわり)