札幌のループ線に乗ろう

 今回は、札幌の市内電車について書いてみよう。

 日本の路面電車は、全国南は鹿児島から北の札幌まで主要都市19で路線が残っているが、1950年~1960年代の最盛期と比べれば、19というのはかろうじて生き残っているという印象である。

 札幌の路線も東西南北に路面電車が1970年代初めまで走っていたが、現存しているのは1路線のみである。ところがその線が2015年12月に少し伸びた。それまでアルファベットのCみたいに途切れていた線が、その先端同士がつながり環状線となった。駅としては、西四丁目-すすきの間の札幌駅前通りの直線400メートルばかりで、歩いても5分ほどの距離だが、それがつながった。歴史的には大正7(1918)年~昭和18(1943)年まではこの区間に電車が走っていたようなので約70年ぶりに復活したわけである。

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札幌市電路線図(中央の緑部分:新潮社の鉄道地図から抜粋。この時には西四丁目ーすすきの間がつながっていない)

 路面電車については、社会が高齢化し身近な乗り物としての見直しがされて、世界的にも復活の傾向にある。日本でも、宇都宮市などでは路面電車の新線建設にのり出したところもある。

 短いけれどつながるのは嬉しいことである。特に環状線ループ線)であるというのは、楽しい乗り物の原点のような気がする。子供のころに乗った遊園地の鉄道の楽しさを思い起こさせる。

 東京都内を走る山手線や大阪環状線と名古屋の地下鉄名城線は一応ループにはなっているが、走る範囲が広すぎて乗って楽しいなという感じではない。一方、舞浜のディズニーリゾートラインはまさにディズニーワールドを高いところから眺められ、ぐるりと1周しているという実感にワクワク感がある。京葉線電車に手を振る車掌もその気分を盛り上げる。その他環状線としては、富山地方鉄道路面電車も環状になっている。千葉の京成本線ユーカリが丘駅から出る新都市交通の山万(やままん)ユーカリが丘線はテニスのラケットみたいな恰好の環状線である。神戸新交通ポートライナーは、真ん中のポートアイランド部分が環状になっているが、電車は環状に走らないので、これは環状線ではないが、神戸空港にも行けるし面白い路線である。

 ということで、2016年3月に滝川からの帰り道札幌で途中下車し、その400メートルの延伸区間を乗りに行った。

 まともに乗れば、あっという間にその新線部分の乗りつぶしできるが、せっかくなので一度乗車している残りの既存部分も遠回りして乗りつつ最後に新線を踏破する計画を立てた。

 JR札幌駅から地下鉄南北線に乗り換え、すすきの駅で下車した。まずは昼どきなので近くの店でスープカレーをいただくことにした。スープカレーは、いつの間にか札幌のB級グルメとして有名になったが、この地でまだ食べたことがなかった。以前サラリーマンをしていた時には、札幌に来たら何が何でもすすきのの『ひぐま』で味噌ラーメンを食べるという上司の下で働いていた影響を受けて、札幌に来るとかん水の多い黄色のチヂレ麺のラーメンを食べたものだが、時代も変わり多様性と健康志向でぶつ切りの野菜がゴロゴロのスープカレーが本日のチョイスとなった(ただし、新千歳空港でヨリドリミドリの北海道内のラーメンが食べられるフロアが出来たので、選択の余地が広がったという影響もあるとは思う)。

 骨付きの鶏もも肉の入った美味しいスープカレーでおなかを満たし、13時半ごろに外回りのすすきの駅市電のり場に向かうとちょうど3両編成の電車がやってきた。この線では1両だけの単行かと思っていたので、新鮮な驚きであった。それも新型の低床車両だ。2013年にGood-design賞受賞のオシャレでシックなブラックボディの車両である(先頭車両番号A1202B)。

 電車は適度に混んでいる。

 次の資生館小学校前で左折し、南下し始め、東屯田通手前で右折し、西に向かう。正面に藻岩山が見え出す。札幌の通りは碁盤の目のようになっているので電車も通りに沿って走り、曲がるときは直角に折れる。電車は合計6回(外回り電車は左折1回、右折5回)折れて一周する。

 3つ停留所を過ぎると電車事業所前に近づきまた右折する。この辺りが藻岩山のふもとのようだ。すぐにロープウェイ入口に到着したので、ここで一旦下車する。スイカが使えて便利だ。170円。

 有名なコーヒー屋があるので行ってみようと思う。

 スターバックスドトールも好きだけれど、自家焙煎で美味しいコーヒーを出してくれる店も好きである。そんな店が鎌倉にありその店主が出した本で、仕入れる豆が札幌の斉藤珈琲に注文しているというので、そこに行ってみようと思う。時刻はまだ午後2時前だ。

 歩道にはまだ残雪があるがほとんど融けかかっているので、歩きにくくはない。店までは一本道だった。まさに藻岩山のふもとのような場所にひっそりと店はあった。

 おねえさん一人がやっている店で清潔感あふれる店内にはコーヒー豆が樽に入っていくつも並んでいた。イートインはなく、豆を買って帰るだけだった。おすすめを聞いて、モカベースとマンダリンベースの豆を購入。

 帰り道に宮越屋珈琲店に寄る。どうしても一杯飲みたくなった。それに応えるいい雰囲気で丁寧に淹れられた一杯だった。

 市電の停留所に戻る。14時40分ごろに電車がやってくる。今度は単行1両の電車だ。

 西線十四条、西線十一条でたくさんのヒトが乗ってくる。相対式のホームがヒト一人並ぶと通れなくなるような狭さだ。そこでヒトが乗り降りしているという盛況ぶり。

 西四丁目。いよいよその先を右折して新線部分に入り込む。

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西四丁目から札幌駅前通りに入り込むところ

 電車は広い道路の左端を遠慮がちに走り始め、すぐに狸小路。すすきのとの間の唯一の中間駅。

 他の都市の路面電車は通常道路の真ん中を堂々と走るが、歩道寄りに敷設されれば、電車の乗り降りが楽で、降車したとたんに車がすれすれに通ることも避けることができる。名案だと思った。

 しばらく走り信号待ちして再度右折してすすきの到着。時刻は15時11分。

 電車で一回りするだけで1時間はかかりそうである。

 まだ藻岩山にのぼったことがないし、また乗りに来たいと思う。