やっぱ、北海道~(第12回)

(続き)

 追分駅の島式ホームの向かい側3番線に、室蘭本線の1両の岩見沢行が入線してくる。
 また、右手駅舎側1番線には、特急スーパーとかちが5両編成で停車し、気ぜわしく出ていく。追分は接続駅であり、過去の列車が停車できるように長大なホームであるが、本数も少ないため、通常は鄙びた駅である。しかし、一時の賑わいを残して特急列車が去った後は、共に一両という列車が向かい合わせに停車し、アイドリングの音だけが聞こえている。
 3日後の土曜日に廃止になる、次駅の「東追分」駅は、駅標の上に紙が貼られており、いつでもこの地上から抹殺される準備がなされている(紙の下は、「川端」であろう)。
 定刻11時12分発車。左手に見えていた室蘭本線がさっと離れていく。
 東追分は、相対式ホームの駅。緑色の柵と跨線橋がある。周囲は、人家もないのに、ヒトが待っている。明らかに廃止駅を訪ねてきた同好の士であろう。ここで降りて写真を撮り始める中年。こんな小駅でも、廃止になることが理由で、惜別のヒトが集まるのは悪くない。
 ゆったりした傾斜の畑が丘を作り、その一番高いところに杉の木がそびえている。やがて、山あいに入ってくると大きな川が現れて、カーブしながら渡る。並走する道路にメロンが描かれた看板が見えて、夕張市に入ったことが分かる。
 駅は、川端、滝ノ上、十三里とも相対式ホーム。
 その先のトンネルを抜けると、なんと雪が深く残っていた。まもなく、この列車の終点新夕張11時50分定刻3番線に到着。
 向かい側に夕張行の1両のディーゼルカーが止まっている。11時56分発。乗車率は、20%ほど。
 発車して直後は、石勝線に寄り添うが、すぐにプイっと左に折れて分岐する。石勝線の高架の線路が、少し右カーブして岩にくりぬかれたトンネルに吸い込まれているのが見える。
 列車は、すぐに沼ノ端に停車。左片ホームの小駅。左手に谷が開ける。
 その先は切通しのようなところを行く。熊笹も葉先が黄金色になっている。川を渡る。積雪が深い。
 人家が増えて、南清水沢着。左片ホームの駅。
 次の清水沢は、もともとが島式ホームだったのが、右片ホームで使用されている。駅舎が、右手に残っている。その前に、1987年に廃止になった南大夕張鉄道のホームの雰囲気が残っている(南大夕張鉄道は、次章で記載)。
 周囲は、積雪が益々多くなり、雪捨て場のように見える。女子中学生が二人乗って来、カメラを提げたおじさんが降りてゆく。
 その先、右手がちょっとした谷のようになり、登り勾配のため列車のスピードが落ちる。エンジンがうなる。トンネルに入る。夕張が山の中腹の街であることが分かる。
右手に道路が寄り添うようになり、ゆらゆら走って鹿ノ谷到着。左片ホームの駅。
 陸橋が線路をまたいでいる。
 丘の上に家がバラバラ建っている。
 炭住らしきものは見えず、3階建ての新しい団地が見える。
 列車はさらに登りとなる。右手にスキーリフトが見えて、夕張定刻12時23分着。ホームは左片ホーム。降りるヒトは鉄道趣味関係の人間しかいなかった。
 駅舎は、とんがり屋根の塔がついた童話の世界の建物だが、中身は単にキーホルダーなどの土産物屋だった。駅前にも何か興味を持てるようなものがなく、駅のスタンプを押したあとは、鉄道マニアにどこから来たのか聞く店主が、「すごいね、東京から」という声を聴きながら、折り返しの列車の時間を待つ。
 折り返しは、12時31分で、もちろん同じ車両で、何だか乗ってきた鉄道マニア全員が折り返すようだ。
 清水沢で、先ほど降りたカメラおじさんが乗ってくる。
 新夕張に近づく。先ほど見た石勝線の岩穴トンネルに、下り特急列車が吸い込まれていくのが見える。
 新夕張12時54分着。
 この先、帯広に向かうのだが、先ほど見た列車が行ったばかりで、ちょうど接続する列車がない(石勝線の新夕張新得間は、特急列車しか走っていない)。さらに、その後の特急は、新夕張に停車しないので、仕方なくもう一度南千歳に戻り、再度同じところを通過して、石勝線を乗り通すこととする。ダイヤが不便になるとは、こういうことになるのかと感じた。

                            (この項、おわり)