やっぱ、北海道~(第10回)

(続き)

 その先の金華(かねはな)駅も昨年(2016年)3月26日に廃止になったため、島式ホームにあるべき駅標がなくなっている。ただし、かろうじてここが列車のすれ違い場所としては、必要なようで、すれ違い設備が残っているようである。
 留辺蘂(るべしべ)2番着停車。左手に駅舎があるが、雪が深い。
 大学時代の友人でここ出身の山本君に初めてルベシベと聞いたときに、まさにアイヌ語だなと感じた。アイヌ語の「ルペシパ」ru-pes-pa [道・それに沿って下る・もの(川)]から来ているという。
 北見駅手前で長いトンネルに入る。山の中でもないのにどうしてトンネルがあるかというと、これは、1977年にできた日本初の連続立体交差事業により開通したという。北見のような地でというと語弊があるかもしれないが、列車が交通の邪魔にならないようにするほど一時期たくさんの列車があったということでもあるのだろう。
 駅の右手には北見市立中央図書館があり、駅を出ると線路が今度は高架になって揺れも減りスムーズに走る。それだけ投資できる豊かな土地柄なのだろう。
 やがて地上に戻るが、左右の車窓から人家が途切れない。曇り空の下を走る。
 端野は相対式ホーム。通過。右手に瀟洒な駅舎が見える。積雪は50センチ以上ありそう。その先、常呂(ところ)川を斜めに渡る。
 気づけば雪原の牧草地のようなところを走っている。緋牛内(ひうしない)も相対式。通過。雪がさらに深くなり、山の中にさ迷いこみ、やがて下り基調となり、網走川を渡ると、美幌12時13着。ホームの幅が広い。ホームの屋根が途中までしかないので、雪が大量に堆積しているところが残っている。が、この特急列車の長さが確保されていれば、問題はない。ホームは2番線と3番線のみで、1番線が見えない。駅舎は右手に。ここに駅前旅館の主人が迎えに来てくれた場所である記憶はまったくなかった。夜遅くに到着し、雪模様の早朝に乗車しただけの場所なので、仕方ないのだろう。
 この車両に乗車するヒトもなく発車して、しばらくすると美幌川を渡る。
 その先も山の中を疾走し、左手の林の向こうに牧場が見え、右手は北海道らしい丘陵と雑木林があり、女満別着。相対式ホーム。
 2両の旧式のディーゼルカーの各駅停車と交換。ピンクの貨物列車が留置されているのが見える。駅舎は近代的なビルになっている。
 東京から北海道の網走に行くなら、女満別空港に行くのが近い。ただし、列車の便がいいわけでないので、この空港から女満別駅を利用することはない。
 自分には、なまかじりの趣味がいくつかあって、その一つに灯台巡りがある。十年ほど前に道東で同好会がツアーを計画し、それに参加した。往きは女満別空港に降り立ちそこからレンタカーで能取岬灯台をはじめとして、ノッカマップ埼灯台、知床の近くの宇登呂灯台根室納沙布岬灯台、湯沸岬灯台、落石埼灯台、花咲灯台、釧路灯台と黒又は赤の色が鮮やかな北海道を代表する灯台群を見て楽しめた。その時に車で回ってしまった場所を今回列車で再訪しようとしている。
 列車は女満別を出てしばらく走ると、トンネルがあり、呼人(よぶと)。通過。相対式のホームが千鳥の位置になっている。上りホームの先頭と下りホームの先頭が同じ位置にあり、過去に単線の安全を確保するときにタブレットを駅長が受け渡しをするのに楽な位置であるので、まったく平行にホームを向かい合わせにするよりは、効率的というメリットがある(何か思いつかないデメリットももちろんあるだろうけれど)。
 左手に網走湖が見え出す。湖面には積雪があるが、色とりどりのテントが張られているところがあり、ワカサギ釣りの場所にもなっているようだ。
 やがて、昔ながらの不景気なオルゴールが鳴って、車掌の網走到着とそれから先の釧網本線の乗換案内が流れる。
 定刻12時40分、網走駅1番線に到着。JR北海道の長距離列車が定刻で到着するだけで、すごいなと思った。

                              (本項 おわり)